安全・法令
軽貨物の点呼義務|業務前・業務後に確認する項目・点呼記録簿の書き方・1年間の保存
点呼は名前を呼ぶ作業ではありません。運転者が安全に運行できる状態かを確かめ、問題があれば運行させないための安全管理です。2025年4月から軽貨物の安全対策が強化され、点呼の記録と保存も法令上の義務として整理されました。業務前と業務後で何を確認するか、記録簿に何を書くか、誰がどこで行うか、一人で事業をしている場合の進め方を、国土交通省の資料に沿って一日の流れで整理します。
Answer結論
軽貨物の点呼では、業務前に酒気帯びの有無(アルコール検知器と目視)、疾病・疲労・睡眠不足の有無、日常点検の実施を確認し、業務後に酒気帯びの有無と車両・道路・運行の状況を確認します。内容は点呼記録簿に記録して1年間保存し、一人で事業を行う場合も自ら確認します。
Key pointsこの記事の要点
- 業務前は酒気帯び・体調・日常点検、業務後は酒気帯び・車両や道路や運行の状況。確認事項は前後で違う
- 酒気帯びはアルコール検知器と目視で確認し、数値の高低にかかわらず酒気を帯びていれば運行させない
- 点呼の内容は日々点呼記録簿に記録し、1年間保存する。パソコンやスマートフォンでの記録も可能
- 点呼は原則として安全管理者が行う。2027年3月31日までは事業者内の他の人でもよいとされている
目次
01軽貨物の点呼では、何を確認する?
国土交通省のリーフレットでは、法令で定められた確認事項として、運転者の酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足などで安全な運転ができないおそれの有無、業務に係る事業用自動車・道路・運行の状況、車両の日常点検の実施またはその確認が示されています。
このうち、業務前と業務後で確認する事項は違います。国土交通省のFAQでは、業務前の点呼で酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足などの有無、日常点検の実施またはその確認を、業務後の点呼で酒気帯びの有無と、事業用自動車・道路・運行の状況を確認するとされています。
乗務前に、運転者や事業用自動車に何らかの問題が確認された場合は、運行してはいけません。確認して終わりにせず、運行を止める基準と、代わりの運転者を手配する人をあらかじめ決めておきます。
図1業務前点呼と業務後点呼で確認すること(国土交通省のリーフレット・FAQをもとに作成)
| 項目 | 業務前 | 業務後 |
|---|---|---|
| 酒気帯びの有無 | 確認する | 確認する |
| 疾病・疲労・睡眠不足 | 確認する | — |
| 日常点検の実施 | 確認する | — |
| 車両・道路・運行の状況 | — | 確認する |
| 確認事項 | 確認方法の例 |
|---|---|
| 酒気帯びの有無 | アルコール検知器を用いて確認し、運転者の状態を目視でも確認する |
| 疾病・疲労・睡眠不足などの有無 | 体温、血圧、顔色、呼気の臭い、声の調子などから確認する |
| 事業用自動車・道路・運行の状況 | 運行中に気になる点がなかったかを確認する |
| 日常点検の実施またはその確認 | エンジンルーム内、ライト、タイヤ、運転席周りを目視などで確認する |
02一日の点呼と記録は、どう流れる?
点呼は、業務記録や日常点検とつながって初めて意味を持ちます。出発前に点呼で状態を確かめ、運行中は休憩や待機を業務記録に残し、帰着後に点呼で運行中の異常を聞き取る。この一連の流れを、毎日同じ順番で回せるように決めておきます。
図2一日の点呼と記録の流れ(例)
- 出発前日常点検と業務前点呼
検知器と目視で酒気帯びを確認。睡眠・体調・日常点検を聞き、指示事項を伝えて記録する
- 運行中休憩・待機を業務記録に残す
異常気象などのときは、運行の中止を含めて必要な指示を出す
- 帰着後業務後点呼
検知器で酒気帯びを確認し、車両・道路・運行で気になった点を聞いて記録する
- 当日中記録の漏れを確認
点呼記録と業務記録がそろっているかを安全管理者が見る
- 月1回運行実績と突き合わせる
未記録、時刻の矛盾、同じ記載の連続がないかを確認する
03点呼記録簿には、何を書く?
点呼の内容は、日々点呼記録簿に記録します。国土交通省は点呼記録簿の例を公開しているので、まずはその様式を基本にすると漏れを防げます。FAQでは、業務前と業務後それぞれで記録すべき事項が示されています。
| 事項 | 業務前 | 業務後 |
|---|---|---|
| 点呼執行者名 | 記録する | 記録する |
| 運転者等の氏名 | 記録する | 記録する |
| 事業用自動車を識別できる記号・番号等 | 記録する | 記録する |
| 点呼日時 | 記録する | 記録する |
| 点呼方法(検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的方法) | 記録する | 記録する |
| 酒気帯びの有無 | 記録する | 記録する |
| 疾病・疲労・睡眠不足等の状況 | 記録する | — |
| 日常点検の状況 | 記録する | — |
| 指示事項 | 記録する | — |
| 自動車・道路及び運行の状況 | — | 記録する |
| 交替運転者等に対する通告 | — | 記録する |
| その他必要な事項 | 記録する | 記録する |
04点呼記録の保存期間は?電子でもいい?
点呼記録は1年間保存します。リーフレットでは、各種の記録・保存はパソコンやスマートフォンで実施できるとされています。電子化する場合は、入力できる人の権限、訂正したときの履歴、データのバックアップを決めておきましょう。
安全管理者は月に一度、運行した日と点呼記録を突き合わせ、未記録、時刻の矛盾、同じ記載の連続がないかを確認します。後日まとめて埋める運用は、実施したことの証明になりません。
05点呼は、誰が・どこで行う?
国土交通省のFAQでは、点呼は貨物軽自動車安全管理者が実施する必要があるとされています。ただし、2027年(令和9年)3月31日までの間は、事業者内の者が点呼を行っても差し支えないとされています。複数の人で点呼を回している会社は、この期限までに、点呼を担う人を安全管理者として選任しておくかを決めてください。営業所ごとに複数名を選任することも可能とされています。
場所は、営業所または車庫です。宿泊を伴う運行などで遠隔地から業務を始める・終える場合は、運行上やむを得ない場合として電話等による点呼を行います。
06一人で事業をしている場合の点呼は?
一人で事業を行っている場合は、自ら確認を行います。FAQでは、アルコール検知器を使った酒気帯びの確認や車両の日常点検などを自ら確認し、運行の可否を判断するよう示されています。リーフレットでは、家族と同居している場合に、自身の体調を客観的に見てもらうことも有効だとしています。
自分で自分を確認するときほど、検知器の数値と体調のチェック項目を決め、数値や所見をそのまま記録することが大切です。眠気が強い朝に『少し休めば大丈夫』と自分に甘くならないよう、運行を止める基準を先に紙に書いておきます。
複数人の会社では、点呼担当が休む日、早朝・深夜、通信障害、検知器の故障を想定し、代わりの担当者と予備の検知器を決めます。点呼担当者自身が運転する場合も、確認を省略しない流れにします。
07勤務時間の基準も、点呼で確認する?
睡眠不足や疲労は、勤務時間の長さと深く関係します。国土交通省のリーフレットでは、軽貨物の運転者の勤務時間について、改善基準告示に基づく次の基準が示されています。一人で事業を行っている場合も、自らこの範囲で勤務時間を設定し、守る必要があります。
FAQでは、拘束時間・休息期間・運転時間は運行の計画を立てる際に業務記録を参照して基準を超えていないかを確認し、連続運転時間はあらかじめ休憩をとる時間を計画に入れるよう示されています。運転を中断するときは、原則として1回おおむね連続10分以上、合計30分以上の休憩が必要です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 1年・1か月の拘束時間 | 1年3,300時間以内、1か月284時間以内 |
| 1日の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安) |
| 1日の休息期間 | 継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない |
| 運転時間 | 2日平均で1日9時間以内、2週平均で1週44時間以内 |
| 連続運転時間 | 4時間以内 |
08点呼を形だけにしないためには?
点呼が続かない会社では、確認項目が多すぎる、異常時の判断が担当者任せ、記録の置き場所が決まっていない、のいずれかが起きています。確認項目は国の様式を基本に絞り、異常時は誰に連絡し誰が運行可否を決めるかを一枚にまとめます。例外が発生した件数を月次の監査に上げ、例外が常態化していないかを確認してください。
- 点呼記録簿は国の例を基本にし、項目を独自に増やしすぎない
- 運行を止める基準(検知器の反応、強い眠気、発熱など)を一枚に書く
- 止めたときに代走を手配する人と、荷主へ連絡する人を決める
- 点呼担当の不在日と、検知器の故障時の代わりを決める
- 例外の件数を毎月数え、同じ例外が続いていないかを見る
Q&Aよくある質問
- 一人で軽貨物をしている個人事業主も点呼は必要ですか?
- 必要です。一人で事業を行っている場合は、アルコール検知器を使った酒気帯びの確認や日常点検などを自ら確認して運行の可否を判断し、記録を1年間保存します。国土交通省のリーフレットでは、家族と同居している場合に体調を客観的に見てもらうことも有効だとしています。
- 点呼は、安全管理者以外の人が行ってもいいですか?
- 国土交通省のFAQでは、点呼は貨物軽自動車安全管理者が実施する必要があり、2027年3月31日までの間は事業者内の者が行っても差し支えないとされています。早朝や休日も点呼を回す会社は、期限までに点呼を担う人の選任を検討してください。
- 電話や遠隔点呼で点呼をしてもいいですか?
- 宿泊を伴う運行などで営業所において対面で点呼ができない場合は、運行上やむを得ない場合として電話等で点呼を行います。国土交通省のFAQ(令和7年12月更新)では、告示の改正により軽貨物の事業者も遠隔点呼・自動点呼の制度を活用できるとされています。機器や実施場所の要件があり、実施予定日の原則10日前までに運輸支局等への届出が必要とされているので、事前に確認してください。
参考資料
制度に関する参照資料の確認日:2026年10月3日。個別の適用・最新情報は各窓口へご確認ください。
