利益・経営
軽貨物会社が追うべき経営KPI|採用・定着・品質・利益の一覧
売上だけを追うと、採用不足、離職、事故、代走が利益を削っていることに気づくのが遅れます。一方で、数字を増やしすぎると誰も見なくなります。会社の状態を一枚で見られるよう、結果指標と先行指標を一つずつ組み合わせます。数字は人を責めるためではなく、『この案件を続けるか』『この条件で人を採れるか』を決めるために使います。
Answer結論
軽貨物会社の経営KPIは、採用・定着・安全・品質・利益・組織の6領域で、結果指標と先行指標を一つずつ組み合わせて追うのが基本です。たとえば定着なら30日・90日定着率と面談の実施率、品質なら誤配の件数と再教育の完了率。指標ごとに定義・担当・確認の頻度・基準を決め、数字が悪化したら次の行動につなげます。
Key pointsこの記事の要点
- 採用・定着・安全・品質・利益・組織を、一枚の表で見る
- 結果指標と、それを動かす先行指標を一つずつ組み合わせる
- 指標ごとに定義・担当・頻度・基準を決めておく
- 品質を数字で示せると、荷主との交渉でも強くなる
目次
01最初に追う12の指標
会社の規模に応じて減らして構いません。大切なのは、毎月同じ定義で比べられることです。結果指標だけでは、悪くなったと分かったときには手遅れになりがちなので、結果を動かす先行指標を隣に置きます。
| 領域 | 結果指標 | 先行指標 |
|---|---|---|
| 採用 | 30日定着した人あたりの採用単価 | 応募への返信時間 |
| 定着 | 30日・90日定着率 | 初週の声かけ・面談の実施率 |
| 安全 | 事故・重大な不備の件数 | 点呼・教育の完了率 |
| 品質 | 誤配の問い合わせ・時間指定を守れなかった割合 | 再教育の完了率 |
| 利益 | 案件ごとの粗利額・粗利率 | 代走の回数・管理にかかる時間 |
| 組織 | 社長が代走に出た時間 | 管理者が判断を終えた割合 |
02品質は、数字にすると改善できる
『ちゃんと配っています』『気をつけています』では、改善の進み具合も、荷主への説明もできません。誤配の問い合わせが月に何件あったか、時間指定を守れなかった割合が何%か。数字にすると、どの拠点の、どの時間帯で、何が起きているかが見えてきます。
数字で示せる品質は、荷主との単価交渉や、取引先を選ぶときの強さにもなります。品質を数字で示せることは、選ばれる側から選ぶ側へ回るための4つの強さの一つです。
図1代表が前職で、品質KPIを設計・運用したときの変化
- 誤配の問い合わせ
- 5→1件/月
- 時間指定を守れなかった割合
- 10%超→5%以下
03数字だけで評価すると、人は無理をする
KPIを決めると、その数字だけを追わせたくなります。しかし、数字だけを追わせると、人は数字のために無理をします。安全を削り、報告を隠し、新人を放置してでも、目先の数字を作ろうとする。
だから、見るのは結果の数字と、そこへ至る行動の両方です。事故を起こしていないか。人が定着しているか。新人を育てているか。決めたルールを守っているか。基準を先に示し、結果と行動の両方で評価します。
図2結果だけを見る評価と、結果と行動を見る評価
| 項目 | 結果だけを見る | 結果と行動を見る |
|---|---|---|
| 評価の対象 | 売上・件数などの数字 | 数字+安全・定着・育成・ルールの遵守 |
| 起きやすいこと | 安全を削る、報告を隠す、新人を放置する | 数字を作るための無理が起きにくい |
| 管理者の動き | 自分で走って数字を作る | 人を育て、仕組みで数字を作る |
04定義書は、指標ごとに一行で作る
たとえば応募数なら、重複応募、連絡がつかない応募、対象の期間をどう扱うかを決めます。定着率なら、母数を応募者にするのか、稼働を始めた人にするのか。定義があいまいなままだと、会議のたびに数字が変わり、議論が数字の正しさに終始します。
| 指標 | 定義 | データ元 | 担当 | 頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 90日定着率 | その月に稼働を始めた人のうち、90日後も稼働している人の割合 | 稼働記録 | 採用担当 | 月次 |
| 誤配の問い合わせ | 荷主・受取人から誤配として連絡があった件数 | 問い合わせ記録 | 各拠点の管理者 | 週次 |
| 案件粗利 | 案件の売上 − ドライバー支払い − 代走・案件固有の費用 | 請求書・支払明細 | 経理 | 月次 |
| 社長の代走時間 | 社長が自分で配送に出た時間の合計 | 配車表 | 社長 | 週次 |
05赤・黄・緑の基準は、自社の数字で決める
一般的な平均を借りる前に、過去3〜6か月の自社の数字と事業計画から基準を置きます。赤になった指標は、責任を追及する合図ではなく、原因、暫定の対応、担当、期限を決める合図です。
06週次と月次を分けて見る
毎週見る数字と、毎月確定させる数字を分けます。四半期に一度は、指標そのものがまだ必要かを見直します。
図3KPIを確認するリズム
- 01週次応募への返信、欠車、事故、誤配、未処理の相談など、早く動く数字
- 02月次定着率、案件粗利、採用単価、管理にかかる時間を確定値で
- 03四半期指標の追加・削除と、基準値の見直し
07KPIを、現場の行動に置き換える
『90日定着率を上げる』だけでは、担当者が今日何をすればいいか分かりません。応募には当日中に返信する、3日面談を予定に入れる、未解決の相談は48時間以内に返す、というように、担当者が自分で動かせる行動に落とします。
指標が悪化したときは、データの誤り、母数の変化、実態の悪化の順に確かめます。良い数字も、未報告や対象の除外で作られていないか、ときどき抜き取りで確かめます。
08数字が苦手でも、一枚の表から始められる
この業界の社長の多くは現場の叩き上げで、経営の数字を教わる機会がほとんどありませんでした。できなくて当たり前です。ただ、数字を見ないまま人の生活を預かり続けることだけは、避けなければなりません。
最初から12の指標をそろえる必要はありません。現場ごとの粗利、30日定着率、誤配の件数の3つだけでも、毎月同じ形で書き出してみてください。自分で学ぶ、社内に数字を見られる人を置く、外部の力を借りる。どの道を選んでも構いません。
Q&Aよくある質問
- 軽貨物会社のKPIは、いくつくらい追えばいいですか?
- 最初は6領域で結果指標と先行指標を一つずつ、合わせて12程度が目安です。規模が小さければ、現場ごとの粗利、30日定着率、誤配の件数の3つから始めても構いません。毎月同じ定義で比べられることを優先します。
- 品質のKPIには、何を使えばいいですか?
- 誤配の問い合わせ件数、時間指定を守れなかった割合、クレームの件数などが使えます。結果指標と一緒に、再教育の完了率などの先行指標を置くと、悪化したときにすぐ手を打てます。
- KPIで管理者を評価してもいいですか?
- 評価に使えますが、数字だけで評価すると、安全を削ったり報告を隠したりする無理が起きます。結果の数字と、安全・定着・新人の育成・ルールの遵守といった行動の両方で評価する基準を、先に示しておきます。
