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軽貨物会社の利益率はどれくらい?売上ではなく粗利で見る方法

『利益率は何%なら正解か』より先に、何を利益と呼んでいるかをそろえる必要があります。現場の叩き上げで会社を大きくしてきた社長ほど、経営の計算を誰にも教わっていません。私はそれを責めるつもりはありません。ただ、数字を見ないまま人の生活を預かり続けることだけは、選んではいけない道です。案件ごとの粗利から、自社の基準を作る方法を整理します。

Answer結論

軽貨物会社の利益率に、すべての会社に当てはまる正解の数字はありません。先に必要なのは、売上からドライバーへの支払いを引いた残りを利益と思わず、管理者の人件費、代走、採用、事故、車両や燃料、そして預かっている消費税まで引いて、現場ごと・月ごとに手元にいくら残るかを答えられる状態にすることです。率は、その金額を比べるための道具です。

Key pointsこの記事の要点

  1. 売上からドライバー支払いを引いた残りは、まだ利益ではない
  2. 粗利・営業利益・資金繰りの3つを分け、率と金額を必ず並べて見る
  3. コストは上がり続け、運賃は据え置きの現場もある。だから現場ごとの数字が交渉力になる
  4. 数字が苦手なら、学ぶ・社内に置く・外部を使うのどれかを選ぶ
目次
  1. 01『15万円儲かっている』は、幻かもしれない
  2. 02まず3つの利益を分ける
  3. 03利益率だけでは、会社を守れない
  4. 04コストは上がり、運賃は据え置きのまま
  5. 05利益が、選ばれる側から選ぶ側へ回る力になる
  6. 06業界平均の読み方
  7. 07毎月の経営会議で見る数字
  8. 08自社の基準値を作る3か月
  9. 09数字が苦手な社長が取れる、3つの道
  10. 10よくある質問

01『15万円儲かっている』は、幻かもしれない

たとえば一つの現場で、月に70万円の売上が入るとします。ドライバーへの支払いが55万円。残りは15万円です。ここまでしか見ていないと、『この現場は15万円儲かっている』と思ってしまいます。

しかし実際には、ここから管理する人の人件費が出ていきます。誰かが休めば代走の手当、人が辞めれば次を採る広告費、事故が起きれば処理の費用。車両の維持費も、燃料の高騰分も乗ってきます。そして忘れられがちなのが、売上の70万円に含まれている消費税です。それは預かっているお金であって、利益ではありません。

全部を差し引いて、手元にいくら残っているのか。それを月ごとに、現場ごとに答えられないなら、その15万円の儲けは幻かもしれません。

図1月70万円の現場で、ドライバー支払い後に残る15万円

  • 売上(税込)70万円
  • ドライバーへの支払い55万円
  • 差額15万円
説明のための仮の数字です。この15万円から、管理者の人件費、代走の手当、採用費、事故の処理、車両・燃料、預かっている消費税が、さらに出ていきます。
  • 管理者・事務の人件費
  • 代走の手当と、急な手配の手間
  • 人が辞めたときの求人広告費・面接・教育
  • 事故・誤配の処理費用
  • 車両の維持費、保険、燃料の高騰分
  • 売上に含まれる、預かっている消費税

02まず3つの利益を分ける

売上からドライバーへの直接支払いや案件固有の費用を引いた『案件粗利』、そこから本部の人件費・採用・家賃などを引いた『営業利益』、さらに入金と支払いの時期を反映した『資金繰り』は、それぞれ別物です。利益率の話が噛み合わない原因の多くは、この3つが混ざっていることです。

利益の見方表は横にスクロールできます →
指標計算の考え方使う場面
案件粗利案件売上-直接原価(ドライバー支払い・代走・案件固有費)案件の継続・運賃の判断
粗利率案件粗利÷案件売上案件どうしの比較
営業利益粗利の合計-販管費(本部人件費・採用・家賃など)会社全体の採算
資金繰り入金-支払いの時系列支払いができるかどうか

03利益率だけでは、会社を守れない

率が高くても、売上の規模が小さければ管理者一人分の人件費を賄えません。反対に、率は低くても、標準化されて大量に運べる案件は大きな利益額を生むことがあります。率と金額は必ず並べて見ます。

そして、最後に会社を守るのは資金繰りです。どんぶり勘定の会社でいちばん恐ろしいのは、ある日突然、払うべきお金が払えなくなることです。最悪の場合、ドライバーへの支払いを残したまま社長が姿を消す。これはたとえ話ではなく、実際に業界で起きていることです。個人事業主のドライバーにとって、その報酬は家族を養い、車のローンを払うための生活のすべてです。

04コストは上がり、運賃は据え置きのまま

ここ数年で、軽貨物を取り巻くお金の環境は急に厳しくなりました。インボイス制度で実質的な負担が増えた会社と個人事業主は少なくありません。ガソリン代、車両の価格、修理部品、物価まで、仕事をするためのあらゆるコストが上がっています。

一方で、運賃を上げた会社もありますが、ほとんど上げていない会社も多いのが実情です。私の知る範囲でも、5年前から運賃がまるで変わっていない現場が現実にあります。コストだけが上がり続ければ、ドライバーの実質的な稼ぎやすさも、会社の経営の難易度も、確実に悪化します。だからこそ、現場ごとの数字を持っていることが、運賃交渉の土台になります。

05利益が、選ばれる側から選ぶ側へ回る力になる

軽貨物の会社は数が多く、『請け負う会社はほかにもある』という力関係の中で、無理な条件を飲まされやすい立場にあります。この関係を変えられるのは、断っても揺るがない経営の土台を持つ会社だけです。

その強さの正体は、特別なものではありません。次の4つです。

  • 一つの取引先に、売上の全部を握られないこと
  • 数か月なら耐えられる資金があること
  • 自分たちの品質を、数字で示せること
  • 人を採り、育てられる力があること

06業界平均の読み方

公的な統計でも、企業規模や調査の区分によって収益性は大きく異なり、赤字の区分もあります。一つの平均値を『適正な利益率』として全案件へ当てはめず、同じ費用区分で自社の推移を比べてください。

07毎月の経営会議で見る数字

粗利が計画を下回った案件は、単価、物量、支払い、代走、管理工数のどこが原因かを分解します。改善の期限を決め、値上げ、条件変更、撤退を数字で判断します。数字は『この案件を続けるべきか』『この条件で人を採れるか』『この報酬を払って会社に利益が残るか』を決めるために使います。

  • 売上・粗利・粗利率(会社全体と現場別)
  • ドライバー支払い・管理費・採用費・車両費・保険
  • 代走費・欠員による損失・クレーム対応の費用
  • 現場別・拠点別・月次の利益
  • キャッシュフローと支払いサイト

08自社の基準値を作る3か月

最初の3か月は、正解の率を決める期間ではなく、費用の漏れをなくす期間です。案件ごとに粗利額・率、管理工数、代走、入金日を同じ形式で集めます。季節変動や一時的な立ち上げ費には注記をつけ、通常運営の数字と分けます。

そのうえで、本部の固定費を賄う最低の粗利額と、事故・採用の予備費まで含めた目標額を置きます。基準を下回る案件は、現場に努力を求める前に、まず契約条件を確認します。

図2自社の利益基準を作る3か月

  1. 011か月目案件ごとの売上・支払い・直接費を同じ形式で集める
  2. 022か月目代走・管理工数・入金日まで足し、漏れを埋める
  3. 033か月目最低粗利額と目標額を決め、下回る案件の条件を確認

09数字が苦手な社長が取れる、3つの道

自分に計算の力がないなら、道はいくつかあります。腹を括って自分で学ぶ。社内に数字を見られる人を置く。多少お金がかかっても、腕のいい税理士や外部の力を借りる。どれを選んでも構いません。

ただ一つだけ、選んではいけない道があります。数字を見ないまま、人の人生を預かって走らせ続けるという道です。

Q&Aよくある質問

軽貨物会社の利益率は、何%くらいが目安ですか?
何を利益と呼ぶかで数字が大きく変わるため、一つの目安を全社に当てはめるのは危険です。案件粗利、営業利益、資金繰りを分け、自社の費用区分で月ごと・現場ごとの金額と率を追い、本部の固定費を賄える最低粗利額を基準にします。
売上からドライバーへの支払いを引いた残りは、利益ではないのですか?
まだ利益ではありません。そこから管理者の人件費、代走の手当、採用費、事故の処理費、車両や燃料の費用が出ていき、売上に含まれる消費税は預かっているお金です。それらを引いた後に残る金額で判断します。
経営の数字が苦手です。どうすればいいですか?
自分で学ぶ、社内に数字を見られる人を置く、税理士や外部の専門家の力を借りる、のどれかを選びます。どれでも構いませんが、数字を見ないまま人の生活を預かり続けることだけは避けてください。

参考資料

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