定着・教育
軽貨物ドライバーの早期離職コスト|採用費以外に失う金額
早期離職の損失は、求人広告費だけではありません。面接、契約、横乗り、管理者の対応、欠車、再募集まで含めると、見えない費用が積み上がります。しかも一人の離職は、残った人へのしわ寄せを通じて、次の離職を呼びます。金額にして初めて、定着に使える予算を判断できます。
Answer結論
早期離職のコストは求人広告費だけではありません。選考と教育にかけた社内の時間、欠員を埋める代走の手当、慣れない人が走ることによる誤配やクレーム、そして最悪の場合は荷主の仕事そのものまで含まれます。これらを直接費・社内の時間・運行への影響に分けて一人ずつ金額にすると、定着にいくらまで使ってよいかが決められます。
Key pointsこの記事の要点
- 離職コストを、直接費・社内の時間・運行への影響に分けて計算する
- 時間は担当者の時間単価で、金額に置き換える
- 一人の離職が次の離職を呼ぶ『負の連鎖』まで見る
- 最初に辞めるのは、いちばん残ってほしい人であることが多い
目次
01一人が辞めると、会社は何を払うのか
一人が辞めると、まずその穴を埋めるために、また採用にお金がかかります。求人広告を出し、面接をし、また一から教える。その間、その現場は人が足りず、他のドライバーにしわ寄せがいきます。無理が重なれば、その人たちも疲れて辞めていく。負の連鎖です。
さらに、辞めた穴を慣れないドライバーで埋めれば、ミスが増えます。誤配、遅延、クレーム。品質が落ちれば荷主の信頼を失い、最悪の場合、仕事そのものを失います。
図1一人の離職から始まる、負の連鎖
- 01一人が辞める採用・面接・教育をもう一度
- 02欠員のしわ寄せ他のドライバーの負担が増える
- 03慣れない代わり誤配・遅延・クレームが増える
- 04次の離職無理が重なった人も疲れて辞める
- 05荷主の信頼を失う最悪の場合、仕事そのものを失う
02離職コストを6つに分けて計算する
自社で実際に発生した金額と時間を集めます。一般的な相場を当てはめるより、請求書、勤務記録、代走の実績から計算するほうが、経営判断に使えます。
| 分類 | 含めるもの | 計算の仕方 |
|---|---|---|
| 募集 | 媒体・紹介・原稿の制作 | 請求額 |
| 選考 | 応募への返信・面接・契約説明 | かかった時間 × 担当者の時間単価 |
| 教育 | 横乗り・教材・車両や端末の準備 | 指導の時間 + 実費 |
| 欠員・代走 | 代走の手当、欠車による減額 | 追加で払った額 + 減った粗利 |
| 品質 | 誤配・遅延・クレームの対応 | 対応にかかった時間と費用 |
| 再採用 | もう一度の掲載・面接・教育 | 上と同じ方法で計算し直す |
03計算してみると、いくらになるか
次の数字は、計算の手順を説明するための仮の数字です。業界の平均でも、ロジエスや特定の会社の実績でもありません。自社の請求書と記録に置き換えて計算してください。
図2早期離職1人あたりのコストの内訳(説明のための仮の数字)
04売上ではなく、粗利への影響で見る
欠車で失った売上をそのまま損失とすると、過大になることがあります。走らなかった分のドライバーへの支払いも発生していないからです。失ったのは売上ではなく、その分の粗利です。
一方で、荷主からの評価の低下や、管理者が代走の手配に追われて営業できなかった時間は、帳簿には出てきません。帳簿で確かめられる直接費と、推定の影響は、分けて表示します。
05最初に辞めるのは、いちばん残ってほしい人
離職コストを計算するときに、もう一つ覚えておいてほしいことがあります。辞める人の『質』です。
06辞めた時期で、原因の見当をつける
3日以内は募集時の説明や初日の体験、30日以内は教育・案件との相性・収支、90日前後は評価や将来の見通し・管理者との関係が影響しやすい、という仮説を置きます。ただし決めつけず、面談の記録と照らし合わせます。
図3辞めた時期と、疑うべきところ
- 3日以内入り口のギャップ
募集時の説明、初日の迎え方
- 30日以内教育・相性・収支
研修、案件、想定収入との差、体の痛み
- 90日前後報われなさ
評価、報酬の説明、先の見通し、管理者との関係
07定着施策に使える予算の上限を決める
一人の早期離職で失う平均額が分かれば、面談の時間、教材、指導役の手当に、いくらまで使えるかが決められます。仮に一人あたり15万円を失っているなら、一人の離職を防ぐために数万円をかけることは、十分に元が取れる判断です。
施策を始めた後は、定着率だけでなく、一人あたりの離職コストが下がったかも確かめます。
08一人あたりの損失を、毎月更新する
離職者が出るたびに一人ずつ計算し、四半期ごとに平均と中央値を見ます。大きな案件の一件だけで平均が跳ねることがあるため、中央値も並べます。計算の対象と時間単価を毎回そろえれば、定着に使った費用が損失の削減につながったかを確かめられます。
代走の手当、採用の費用、欠員の損失を金額にしたことがあるか。これは私が著書の最後に置いた『経営者への十の問い』の一つです。離職を防げなかった管理者を責める材料にはせず、採用経路や案件ごとの違いを比べる道具として使います。
Q&Aよくある質問
- 早期離職のコストは、一人あたりいくらくらいですか?
- 媒体費、選考と教育の時間、代走の手当、品質対応などの積み上げで決まるため、会社ごとに大きく違います。一律の相場を当てはめるより、自社の請求書と記録で一人ずつ計算し、平均と中央値を追うほうが判断に使えます。
- 欠車で失った売上は、すべて損失として数えるべきですか?
- 売上ではなく、失った粗利で数えます。走らなかった分のドライバーへの支払いは発生していないためです。ただし、荷主の評価の低下など帳簿に出ない影響は、推定として別に書いておきます。
- 離職コストを計算したら、何に使えばいいですか?
- 定着施策にいくらまで使ってよいかの上限を決めるのに使います。面談の時間、教材、指導役の手当などに投じた費用が、一人あたりの離職コストを下げたかを、施策の前後で比べます。
