利益・経営
軽貨物会社の代走コスト|欠車・採用・管理工数を金額にする
社長が自分で走れば追加費用ゼロ、ではありません。予定していた営業、採用、管理が止まり、翌日の運営にも影響します。そして代走の費用の多くは、荷主との契約の価格に入っていません。会社の利益から黙って出ていくお金と時間を、代走のたびに記録し、欠車を減らす投資と交渉の材料に変える方法を整理します。
Answer結論
代走のコストは、代わりに走った人への追加の手当だけではありません。手配にかかった時間、社長や管理者が自分で走った時間、不慣れな代走による遅れや再配達、苦情の対応までを1件ごとに記録して金額にします。そうして初めて、予備人員を持つべきか、欠車の原因をどう減らすか、代走の費用を運賃にどう反映してもらうかを判断できます。
Key pointsこの記事の要点
- 代走は必ず起きる。起きる前提で、1件ごとの費用を記録する
- 追加支払と、手配・社長代走・品質対応の社内工数を分けて計算する
- 欠車の理由を5つに分け、曜日・案件・車両で再発の傾向を見る
- 代走の件数と費用は、予備人員の判断と運賃交渉の根拠になる
目次
01代走は、起きる前提で費用に入れる
担当のドライバーが朝に体調を崩す。車が故障する。人がやっている仕事なので、こうしたことは必ず起きます。委託を受けた会社が代わりを立てて配送を守るのは、請けた仕事の責任の一部です。
問題は、その責任を果たすための人員も費用も、多くの場合、契約の価格に組み込まれていないことです。代走の手当は会社の利益の中から出ていき、手配の手間は社長や管理者の時間から出ていきます。どちらも記録しなければ、なかったことになります。
この構造が業界の中でどう生まれているかは『軽貨物会社の売上を上げるには?』で書きました。この記事では、自社の代走コストをどう数え、どう減らし、どう交渉に使うかに絞ります。
02代走1件のコストを計算する
代走者への追加支払、移動・車両費、手配工数、管理者が走った時間、品質対応を足します。営業機会の損失は、確定した費用と分けて『推定』の欄に置きます。推定と確定を混ぜると、数字が大きく見えすぎて会議で信用されなくなるからです。
手配工数と管理者代走は、管理者の人件費を月の稼働時間で割った社内の時間単価で金額にします。朝の電話30分、代わりに走った4時間といった記録で十分です。
図1代走1件のコストは、手当だけではない
| 項目 | 計算 | 証拠 |
|---|---|---|
| 追加支払 | 通常との差額 | 支払明細 |
| 移動・車両 | 実費 | 領収書 |
| 手配 | 時間×担当者単価 | 対応記録 |
| 管理者代走 | 走行時間×単価 | 運行記録 |
| 品質影響 | 再配達・減額・苦情 | 荷主報告 |
03代走に入った人には、手当を払うのが筋
代走コストを削ろうとして、代わりに走ってくれた人への手当を削るのは、順番が逆です。急な穴を引き受けてくれた人に報いなければ、次に頼んだとき、誰も手を挙げなくなります。代走を頼める人がいなくなれば、そのたびに社長が走ることになり、結局は高くつきます。
手当は、通常の報酬との差額として明細に分けて書きます。いくら上乗せしたかが見えると、ドライバーにも会社にも、代走が特別な仕事であることが伝わります。
04見えないコストは、品質と荷主の信頼
代走は、現場を知らない人が走る日です。時間指定に遅れる、置き場所を間違える、苦情が入る。その対応に管理者の時間が取られ、再配達や減額が発生します。
欠員が続けば、ほかのドライバーにしわ寄せがいき、疲れた人から辞めていきます。その穴をまた慣れない人で埋めれば、誤配や遅延が増え、荷主の信頼を失い、最悪の場合は仕事そのものを失います。代走の件数は、品質の先行指標でもあります。
図2欠員1件が、会社と現場に広がっていく流れ
- 01朝の欠員連絡社長や管理者が、誰を代走に立てるか決める
- 02不慣れな代走留守がちな家も、混む道も、段取りも知らない
- 03遅れと苦情代走のドライバーが玄関先で謝り、管理者が対応する
- 04しわ寄せ欠員が続けば、ほかのドライバーが疲れて辞めていく
- 05荷主の信頼誤配・遅延が重なれば、仕事そのものを失う
05欠車の理由を5つに分ける
代走を減らすには、欠車の理由を分けて数えることから始めます。理由が違えば、打つ手も違います。全部を『急な休み』でまとめると、対策が『もっと気をつけて』で終わってしまいます。
| 欠車の理由 | 対策の方向 |
|---|---|
| 体調 | 健康状態の申告、長時間稼働の見直し、体を守る装備の指導 |
| 車両 | 予防整備、週末の点検、代車の手配先の確保 |
| 契約離脱 | 条件説明の見直し、初月のフォロー、定着の仕組み |
| 連絡不通 | 欠勤連絡の時刻と方法のルール化 |
| 配車ミス | 前日の配車確認、変更の伝達手順 |
06社長代走を、例外にする
社長が走った回数と時間を会議で公開し、原因と再発防止を決めます。ゼロを目指すより、重大な例外に限定し、管理者が事前に代替案を持てる状態を作ります。
社長が走っている間、営業も採用も、管理者からの相談への返事も止まります。その日の代走費は浮いたように見えても、翌週の商談や、採用の面接が一つ消えているかもしれません。社長代走の時間は、記録しないといちばん見えなくなるコストです。
07予備人員を持つか、都度手配か
月間の代走コストと、予備人員・予備車両を維持する費用を比べます。代走が月に数回なら都度手配のほうが安く済むこともあり、毎週のように起きるなら予備人員のほうが安くなることもあります。比べるには、代走1件のコストが記録されていることが前提です。
予備人員には、通常時の教育、応援、品質の確認など別の役割も設計し、待機だけにしません。代走で入る現場を事前に横乗りで回っておけば、『現場を知らない代走』そのものを減らせます。
図3予備人員を持つ場合と、都度手配する場合
| 項目 | 予備人員を持つ | 都度手配する |
|---|---|---|
| 固定費 | 毎月かかる | かからない |
| 代走1件の手配時間 | 短い | 長くなりやすい |
| 代走の品質 | 事前に現場を回れば安定 | 現場を知らないまま走りやすい |
| 社長が走る回数 | 減らしやすい | 手配できない日に走ることになる |
| 向いている状況 | 代走が毎週のように起きる | 代走がまれで、頼める人がいる |
08代走の数字を、運賃交渉の材料にする
代走の件数、手当の総額、手配にかかった時間、代走日の遅延や苦情の件数。これらを月ごとに出せるようになると、荷主に『安定した配送を続けるために、これだけの体制と費用がかかっている』と数字で説明できます。
代走の費用を、ドライバーへの支払いを削って吸収するのではなく、予備の体制の費用として契約の価格や条件に反映してもらう。その交渉の進め方は『軽貨物の運賃交渉のやり方』にまとめています。
09代走台帳を、改善会議へつなぐ
代走日、案件、欠車理由、手配開始時刻、確定時刻、費用、翌日への影響を一行で残します。同じ運転者名を責める集計ではなく、曜日、案件、車両、連絡時間の傾向を見ます。
たとえば月曜朝の車両故障が多いなら、予備人員より週末の点検が先かもしれません。対策後は代走件数だけでなく、手配時間と社長が走った時間が減ったかを確認します。
- 代走日・案件・欠車理由(5分類)
- 手配を始めた時刻と、代走が決まった時刻
- 追加支払・実費・手配時間・社長や管理者が走った時間
- 代走日の遅延・苦情・再配達の件数
Q&Aよくある質問
- 社長が自分で代走すれば、コストはかからないのではありませんか?
- 手当は出ていきませんが、社長が走っている間、営業、採用、管理者への返事が止まります。社長が走った時間を時間単価で金額にし、止まった商談や採用は推定の欄に記録すると、実際のコストが見えてきます。
- 代走に入ったドライバーの手当は、いくらにすればいいですか?
- 金額の相場より、通常の報酬との差額として明細に分けて示し、急な依頼に報いる考え方を社内で統一することが大切です。手当を削ると次に頼める人がいなくなり、社長が走る回数が増えて、かえって高くつきます。
- 代走の費用を、荷主に負担してもらうことはできますか?
- 必ず通るわけではありませんが、代走の件数、手当の総額、手配時間、代走日の品質を月ごとに数字で示せれば、予備の体制の費用として運賃や条件の見直しを提案する根拠になります。
