定着・教育
軽貨物ドライバーの90日定着率を改善するKPIと計算方法
在籍人数だけを見ていると、採用と離職の出入りが見えません。採用した数でもなく、走り続けている人数を見る。採用月ごとの集団を追い、稼働開始、30日、90日で残った人数を確かめると、問題が募集・教育・案件のどこにあるかを絞り込めます。
Answer結論
90日定着率は『ある期間に稼働を始めた人のうち、90日後も稼働している人数 ÷ 同じ期間に稼働を始めた人数 × 100』で計算します。応募者や在籍者ではなく稼働開始者を母数にし、30日と90日を分けて追うと、問題が入り口のギャップにあるのか、その先の報われなさにあるのかを切り分けられます。
Key pointsこの記事の要点
- 応募者ではなく、稼働を始めた人を定着率の母数にする
- 30日と90日を分けて追う。辞める理由が違うから
- 率だけでなく、人数・離脱理由・案件を同時に記録する
- 改善策は一度に一つ。何が効いたかを確かめられるようにする
目次
01見るのは、採用した数ではなく走り続けている人数
採用の成果を応募数や採用数で測ると、たくさん入れて、たくさん辞める状態でも『採用はうまくいっている』ように見えてしまいます。毎月の求人費を使い続けても、1か月で半分が辞めれば、現場の人数は増えません。
だから、成果は走り続けている人数で測ります。そのための物差しが、稼働開始者を母数にした30日定着率と90日定着率です。
図190日定着率の計算式
| 指標 | 人数 | 率 |
|---|---|---|
| 稼働開始 | 10人 | 100% |
| 30日継続 | 8人 | 80% |
| 90日継続 | 6人 | 60% |
0230日と90日を分けるのは、辞める理由が違うから
早い時期に辞める人と、力をつけてから辞める人とでは、理由がまるで違います。最初の1か月で辞める人は、入る前に聞いた話との差、体の痛み、相談できる人がいない孤独でつまずきます。その先で辞める人は、きついからではなく、『頑張っても報われない』『続けてもどこにも行けない』と気づいて去っていきます。
30日定着率が低いなら、募集時の説明と迎え方を直します。30日は越えるのに90日で落ちるなら、案件の配置、報酬の説明、評価や役割の見通しを確かめます。理由が違えば、防ぎ方も違います。
図230日で辞める人と、その先で辞める人
| 項目 | 30日以内 | 30日〜90日以降 |
|---|---|---|
| 主な理由 | 聞いた話と現実の差、体の痛み、孤独 | 報われない、先が見えない、案件が合わない |
| 先に見る数字 | 面談の実施率、初週の声かけ、研修の未達 | 想定収入との差、案件変更、評価の有無 |
| 直すところ | 募集時の正直な説明、迎え方の仕組み | 配置、報酬の説明、役割と評価 |
03迎え方を変えたら、30日以内の離職が減った
数字で追うと、どこから手をつければよいかが見えます。私が前職で取り組んだときも、最初に見たのは30日以内に辞める人の数でした。
図3代表が前職で、採用から定着までを仕組みにしたときの変化
- 改善前:30日以内に辞めた人(入社10名)
- 10名中6名
- 改善後:30日以内に辞めた人(入社6名)
- 6名中1名
04結果を待たずに見る、先行指標
90日後に結果を知るだけでは、手を打つのが遅れます。結果につながる行動を、週ごとに確認します。
- 応募から稼働までの日数
- 研修の未達項目と、独り立ちの判断が済んだか
- 初週の声かけ・3日面談の実施率
- 初回の報酬説明が済んだか、想定収入との差
- 30日以内の案件変更と、面談で出た未解決の事項
05拠点・案件・採用経路で分けて見る
全社の平均が同じでも、一つの案件だけ離脱が多いことがあります。拠点、案件、指導役、採用経路(媒体・紹介など)ごとに分けて並べます。
少人数では、一人の増減で率が大きく振れます。率の横に必ず人数を書き、単月で決めつけず、3か月以上の傾向で判断します。
| 切り口 | 比べること | 見えてくること |
|---|---|---|
| 拠点 | 拠点ごとの30日・90日定着率と人数 | 管理者の迎え方の差 |
| 案件 | 案件ごとの離脱人数と理由 | 条件と実態の差、案件の負荷 |
| 指導役 | 担当した新人の30日継続 | 教え方・声かけの差 |
| 採用経路 | 媒体・紹介ごとの90日継続 | 募集時の説明と期待の差 |
06数字を、責める道具にしない
定着率を管理者の罰点にすると、無理な引き留めや、離脱理由の書き換えが起きます。数字のために人が無理をするのは、評価を数字だけで行うときに起きる典型的な失敗です。
目的は、募集時の説明の不一致、教育の不足、収支、現場の関係のどれを直すかを決めることです。定着率と一緒に、面談の実施や記録の整備といった行動も評価に入れると、数字だけを作る動きを防げます。
07改善策は、一度に一つずつ
定着率が低いと、面談、手当、研修、案件変更を同時に始めたくなります。しかし同時に始めると、何が効いたのか分かりません。
まず、離脱の人数と理由がいちばん集中している一つの工程を選び、対象の拠点、開始日、期待する変化を決めます。翌月の30日定着率と3か月後の90日定着率を追い、別の採用月と比べます。改善しなかった場合も記録を残し、条件を変えて確かめ直します。
図4定着率を改善する1サイクル
- 01集中箇所を選ぶ離脱の人数と理由が最も多い工程
- 02一つだけ変える対象拠点・開始日・期待する変化を決める
- 0330日で確認翌月の30日定着率と面談の記録
- 0490日で判断続ける・直す・やめるを決め、記録を残す
Q&Aよくある質問
- 定着率の母数に、応募者や面接だけで終わった人を入れてもいいですか?
- 入れません。母数は、その期間に実際に稼働を始めた人です。応募から稼働までの歩留まりは、別の指標(稼働開始率)として追います。混ぜると、採用の問題と定着の問題を切り分けられなくなります。
- 人数が少ない会社でも、定着率を追う意味はありますか?
- あります。少人数では率が大きく振れるため、率と人数を並べて書き、3か月以上の傾向で見ます。誰が、いつ、どんな理由で辞めたかの記録そのものが、次の改善の手がかりになります。
- 30日定着率と90日定着率、どちらを重視すべきですか?
- 両方を分けて見ます。30日で多く辞めているなら募集時の説明と迎え方、30日は越えて90日で辞めるなら配置・報酬・評価の見通しに原因があることが多いため、打つ手が変わります。
