組織化
軽貨物管理者の評価項目|売上だけで評価してはいけない理由
売上だけで管理者を評価すると、無理な配車、教育の後回し、不備の隠蔽が合理的になってしまいます。かといって『よく頑張っているから』という印象で評価すれば、何をすれば報われるのかが本人に見えません。数字で評価し、ただし結果と行動の両方を見る。そのための評価表の作り方を、私が管理者の評価で見てきた項目とあわせて整理します。
Answer結論
売上だけで管理者を評価すると、無理な配車や教育の後回し、不備の隠蔽が合理的な行動になってしまうからです。評価は数字で行い、ただし結果の数字と、事故を防ぐ・人を定着させる・新人を育てる・ルールを守るといった行動の両方を、任命前に基準として示します。
Key pointsこの記事の要点
- 『なんとなく』の評価は優しく見えて、いちばん人をしらけさせる
- 評価は数字で行い、結果と、そこへ至る行動の両方を見る
- 安全・品質には最低条件を置き、売上で相殺できない設計にする
- 本人が制御できない要因は切り分け、責任を負わせる指標には権限も渡す
目次
01売上だけで評価すると、何が起きるか
売上は分かりやすい数字です。ただ、管理者の評価を売上だけで決めると、管理者にとって合理的な行動が変わります。無理な配車で物量をこなす。新人の教育を後回しにして、慣れた人に荷物を寄せる。事故や誤配の報告を遅らせる。どれも、短期の売上を守るためには筋が通ってしまいます。
そのつけは、数か月後に離職と事故とクレームになって返ってきます。しかもその頃には、原因になった判断が見えにくくなっています。管理者が将来の事故や離職を減らした貢献も、評価の対象に入れる必要があります。
02『なんとなく』の評価が、いちばん人をしらけさせる
反対側の失敗が、印象だけで評価することです。この業界には、報酬や役割が『なんとなく』で決まっている会社が少なくありません。
図1『なんとなく』の評価と、数字+行動の評価
| 項目 | 『なんとなく』の評価 | 数字+行動の評価 |
|---|---|---|
| 評価の根拠 | 頑張っていそう、感じがいい | 決めた数字と、そこへ至る行動 |
| 本人に見えるもの | 何をすれば上がるのか分からない | 何を動かせば評価されるかが分かる |
| 手当の決め方 | 『少しつけようか』で決まる | 役割と評価の結果に連動する |
| 起きやすいこと | しらける、頑張りようがない | 目標がはっきりし、結果が正当に報われる |
03結果だけを追わせると、人は数字のために無理をする
ただし、数字『だけ』を追わせるのも危険です。人は数字のために無理をします。安全を削り、報告を隠し、新人を放置してでも、目先の数字を作ろうとする。最初に書いた、売上だけで評価したときに起きることと同じです。
だから見るのは、結果の数字と、そこへ至る行動の両方です。事故を起こしていないか。人が定着しているか。新人を育てているか。決めたルールを守っているか。基準を先に示し、結果と行動の両方で評価します。
安全と品質には最低条件を置きます。売上がどれだけ伸びても、重大な安全違反や隠蔽があれば相殺できない。この一行を評価表に入れておくだけで、管理者が迷ったときの優先順位がはっきりします。
046領域の評価項目
各領域を同じ重さにする必要はありません。会社の優先課題に合わせつつ、安全違反を売上で相殺できない設計にします。
私が管理者の評価で見てきた項目を並べると、次のようになります。全部を一度に使う必要はありません。今の会社でいちばん困っていることに関わる項目から、3〜5個を選んで始めます。
- 定着率・離職率
- 新人フォローの実施
- クレーム・事故・誤配の件数
- 配送品質
- 担当している人数
- 欠員と代走への対応
- 現場の利益と売上
- 改善の実績
| 領域 | 結果 | 行動 |
|---|---|---|
| 安全 | 事故・監査不備 | 点呼・是正完了 |
| 品質 | 誤配・苦情 | 原因分析・再教育 |
| 定着 | 90日定着率 | 面談・配置改善 |
| 利益 | 案件粗利 | 代走・工数削減 |
| 育成 | 独り立ち後品質 | 指導者育成 |
| 標準化 | 社長相談件数 | 基準更新 |
05結果だけでなく条件を補正する
難易度の高い新規拠点と安定拠点を同じ数字だけで比べないよう、人数、案件難易度、開始時期を併記します。少人数の率は振れやすいため件数も表示します。
たとえば、立ち上げたばかりの拠点で定着率が低いのは、管理者の力量だけが原因とは限りません。比べるなら同じ拠点の前の期との比較を基本にし、拠点どうしを比べるときは条件を添えます。
06評価と権限を一致させる
採用権限も配車変更権限もない人へ定着率だけを負わせてはいけません。責任を持たせる指標には、必要な情報、予算、判断権を渡します。
定着率を評価に入れるなら、面談の時間、配置を変える権限、新人のフォロー担当を決める権限も一緒に渡します。渡していない権限の結果まで負わせると、評価は不公平になり、管理者は数字をよく見せる方法を探し始めます。
07四半期面談で、次の役割を決める
点数通知で終えず、うまくいった仕組み、止まった判断、次の90日の課題、必要支援を話します。報酬や役割変更の条件も事前に示します。
面談でいちばん大事なのは、管理者が自分の仕事を数字で語れるようにすることです。『先月より、この現場の利益をこれだけ改善した』『この施策で、離職をこれだけ減らした』。そう言える経験は、本人にとって、走った個数とは別の種類のキャリアになります。評価は査定のためだけでなく、そのキャリアを形にするためにも使います。
08評価制度を導入する順序
まず現在の管理者業務を観察し、本人が制御できる指標を選びます。次に過去データで試算し、どのような行動が高評価・低評価になるか例を示します。いきなり報酬へ連動させず、一四半期は試行してデータ欠落と不公平を修正します。
安全不備を報告した人が評価を下げられないよう、発生そのものと、隠蔽・未是正を分けて扱うことも必要です。報告すると損をする評価表は、悪い情報ほど上がってこない組織を作ります。
図2管理者の評価を導入する順序
- 01観察今の管理者の仕事を見て、何に時間を使っているかを知る
- 02指標を選ぶ本人が制御できる結果と行動を、3〜5個に絞る
- 03試算過去のデータで、誰がどう評価されるかを確かめる
- 04試行一四半期は報酬に連動させず、欠落と不公平を直す
- 05連動基準を示したうえで、報酬と役割に結びつける
09評価は、報酬と役割につながって初めて意味を持つ
評価表を作っても、結果が報酬にも役割にも反映されなければ、管理者はすぐに気づきます。とくに注意したいのは、リーダーや管理者をやっている人より、一人で荷物を運んでいる人のほうが稼げてしまう逆転です。その状態で評価だけを細かくしても、管理者を引き受ける人は増えません。
正当に評価する。役割の重さに報いる。その先の道を示す。この3つはセットです。報酬の設計は、リーダーよりドライバーの方が稼げる問題の記事で整理しています。
Q&Aよくある質問
- 管理者の評価に売上を入れてはいけないのですか?
- 入れて構いません。問題は売上だけで評価することです。売上や利益の結果と、事故を防ぐ、人を定着させる、新人を育てる、ルールを守るといった行動を組み合わせ、安全と品質には売上で相殺できない最低条件を置きます。
- 評価項目はいくつくらいがいいですか?
- 最初は3〜5個で十分です。定着率、事故・誤配、新人フォロー、現場の利益などから、今いちばん困っていることに関わるものを選び、一四半期は報酬に連動させずに試します。
- 安全の不備を報告すると、管理者の評価が下がりませんか?
- 下がる設計にすると、報告が隠れます。不備が起きたこと自体と、隠したこと・直さなかったことを分けて扱い、早く報告して是正した行動は評価に入れます。
