利益・経営
軽貨物の元請けになるには?荷主と直接契約する手順と取適法の要点
二次請けのままでは、単価も条件も上から降りてくるものを受けるしかない。そう感じて、荷主との直接契約を目指す軽貨物会社の社長は多いと思います。直接契約になれば、単価や品質の話を荷主と直接できます。一方で、欠車の穴埋めも、事故やクレームの最終的な対応も、ドライバーへの支払いの立て替えも、自社が負うことになります。何が変わり、何を準備し、どの順番で進めるか。2026年1月に施行された取適法のポイントとあわせて整理します。
Answer結論
軽貨物の元請け(荷主との直接契約)になるには、今の現場の運用を引き受け切って品質を数字で示せる実績を積み、代走・安全・保険・請求の体制と、数か月耐えられる資金をそろえたうえで、範囲を絞った提案と書面での契約に進みます。直接契約になると単価や条件を荷主と直接話せる一方、品質保証、欠車時の代走、事故やクレームの対応、ドライバーへの支払いの立て替えまで、すべて自社が負います。
Key pointsこの記事の要点
- 元請けになると、単価を直接話せる代わりに、品質・代走・事故・支払いの責任をすべて負う
- 今の現場の運用を引き受け切り、品質を数字で示すことが、直接契約への近道になる
- 取引先の分散、数か月耐える資金、品質の数字、採って育てる力の4つをそろえてから広げる
- 取適法・フリーランス法・トラック法の書面のルールを、受ける側と出す側の両方で確かめる
目次
01軽貨物の元請けとは?一次請け・二次請けとの違い
この記事でいう元請けは、荷主と直接、運送の契約を結ぶ立場のことです。『直受け』『直契約』とも呼ばれます。その会社から仕事を受ける会社が二次請け、さらにその下が三次請けです。宅配の現場では、大手の運送会社から直接受ける立場を一次請けと呼ぶことも多く、呼び方は現場によって違います。
なお、改正貨物自動車運送事業法でいう『元請事業者』は、実運送体制管理簿を作成する事業者を指す法律上の言葉で、国土交通省のQ&Aでは貨物軽自動車運送事業者は除かれています。この記事の『元請け』は、法律上の用語ではなく、取引の中での立場を指しています。
二次請けのあいだは、単価も条件も、上の会社と荷主の間で決まったものが降りてきます。元請けになれば、単価、作業範囲、品質の基準を荷主と直接話し合えます。そのぶん、間に入っていた会社が引き受けていた責任も、自社に移ります。
02元請けになると、何が変わるのか
見落とされやすいのは、間に入っていた会社が担っていた役割です。私の見てきた範囲では、二次請けの会社は現場の管理の多くを上の会社に任せ、営業と交渉に力を注いでいることが多いものです。直接契約に切り替えると、その管理を自社が丸ごと引き受けます。
とくに重いのが欠車への対応です。ドライバーが朝に体調を崩す、車が故障する。人がやる仕事なので、必ず起きます。代わりを立てて配送を守るのは請けた仕事の責任の一部ですが、そのための人員と手当が価格に入っていなければ、会社の利益から出ていきます。費用の数え方は軽貨物会社の代走コストで詳しく書いています。
図1二次請けのときと、元請けになってからの違い
| 項目 | 二次請けのとき | 元請けになると |
|---|---|---|
| 単価・条件の相手 | 上の会社 | 荷主と直接 |
| 品質の責任 | 上の会社が荷主に報告する | 自社が荷主に約束し、数字で報告する |
| 欠車・代走 | 上の会社と分担できることもある | 自社で代わりを立て、配送を守る |
| 事故・クレーム | 上の会社が窓口になることが多い | 自社が窓口になり、最後まで対応する |
| 請求・入金 | 上の会社に請求する | 荷主に請求し、入金までドライバーへの支払いを立て替える |
| 書面 | 受ける側として条件を確かめる | 荷主と書面を交わし、委託先にも条件を明示する |
| 保険 | 上の会社が求める範囲で加入する | 荷主との契約で求められる範囲を自社で手当てする |
03荷主は、委託先のどこを見るのか
荷主の立場で考えると、運送を任せる相手に知りたいのは『この会社に任せて、毎日の配送が止まらないか』です。安さだけで選んだ委託先が欠車を繰り返せば、荷主自身の取引先に迷惑がかかります。直接契約を目指すなら、次のことを資料で示せるようにしておくと、準備の抜けが減ります。
2025年4月からは、軽貨物の事業者にも、安全管理者の選任と講習、業務記録や事故記録、事故の報告などの安全対策が強化されています。安全の体制は、荷主に示す材料であると同時に、法令上の義務でもあります。詳しくは軽貨物の安全規制の義務と記録で整理しています。
| 見られる点 | 示すもの |
|---|---|
| 品質 | 誤配の問い合わせ件数、時間指定を守れなかった割合、欠車への対応時間の推移 |
| 供給の体制 | 稼働台数、予備の人員、欠車時の代走の手順と実績 |
| 安全 | 安全管理者の選任、点呼や業務記録・事故記録の運用 |
| 事故・クレーム | 連絡の窓口、報告までの時間、再発防止の進め方 |
| 保険 | 対人・対物の任意保険、荷物の補償の範囲 |
| 経営の土台 | 入金までの資金の余裕、取引先の構成、決算の状況 |
04選ばれる側から選ぶ側へ:元請けに必要な4つの強さ
直接契約を取っても、一社に売上を握られ、資金に余裕がなければ、結局は相手の条件をそのまま飲むことになります。代表の著書 第六章では、選ばれる側から選ぶ側へ回るための強さを、次の4つに整理しました。
元請けになると、この4つがそのまま荷主への説明材料になります。とくに品質の数字は、単価を話し合うときの根拠にもなります。代表の奥山は前職で品質の数字を設計・運用し、誤配の問い合わせと、時間指定を守れなかった割合を下げました。
図2品質を数字で示した例(代表の前職)
- 誤配の問い合わせ
- 5→1件/月
- 時間指定を守れなかった割合
- 10%超→5%以下
- 一つの取引先に、売上の全部を握られないこと
- 数か月なら耐えられる資金があること
- 自分たちの品質を、数字で示せること
- 人を採り、育てられる力があること
05二次請けから直接契約へ:元請けになるまでの手順
近道は、営業の話術より、今受けている現場を確実に回すことです。荷主から見れば、実際に毎日の配送を守っている会社が、いちばん確かな候補だからです。
一方で、今の委託元の頭越しに荷主へ営業をかけると、今の取引も信頼も失いかねません。まず今の契約に、委託元の取引先と直接取引することを制限する条項がないかを確かめます。そのうえで、今の関係を壊さない形で機会を待つか、新しい荷主を開拓する。直接契約への切り替えは、その延長にあると考えるのが現実的です。
図3二次請けから直接契約へ進む順番
- 01今の現場を引き受け切る欠車・代走・教育まで、運用を自社で回せる状態にする
- 02品質を数字で記録する誤配・時間指定・欠車対応を月ごとに残す
- 03案件別の収支と資金を確かめる立て替えに耐える資金と、譲れない単価を決める
- 04体制を整える安全管理、保険、事故・クレームの窓口、請求の仕組み
- 05契約の制約を確かめる今の委託元との契約に、直接取引を制限する条項がないか
- 06範囲を絞って提案する立ち上げられる台数・エリア・期間を具体的に示す
- 07書面で契約し、月次で報告する単価・作業範囲・品質の約束を残し、数字で報告を続ける
06元請けになるリスク:売上と一緒に、資金と責任も増える
直接契約になると、間に入っていた会社の取り分がなくなるぶん、売上も粗利も増えやすくなります。ただ、増えるのはお金だけではありません。
台数を増やす前に、案件ごとに何が残るかを確かめてください。案件別の利益の見方は軽貨物会社の利益率・粗利率の見方で詳しく書いています。資金が薄いまま広げると、何かあったときに真っ先に止まるのは、ドライバーへの支払いです。それだけは避けなければなりません。
- 立て替え:ドライバーへの支払いが荷主からの入金より先に来ることがあり、台数が増えるほど立て替えも膨らむ
- 一社依存:大きな荷主一社に売上が集中すると、契約の見直し一つで会社が揺らぐ
- 代走と予備の体制:欠車を埋める人員と手当を、自社で抱える
- 事故・クレーム:最後の窓口が自社になり、管理者の時間がとられる
- 契約が終わるとき:走っていたドライバーの次の現場を用意する責任が残る
07軽貨物の下請法(取適法):元請けになったら確かめること
2026年1月1日、下請法を改正した取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が施行されました。公正取引委員会のリーフレットでは、従来の資本金基準に従業員基準が加わったこと、発荷主が運送を委託する取引(特定運送委託)が対象に加わったこと、協議に応じない一方的な代金決定と手形払いが禁止されたことが示されています。
元請けになると、この法律との関わり方が二つになります。荷主から運送を受ける側としては、特定運送委託に当たる取引なら、価格協議を求めたのに応じてもらえないといった扱いから守られます。一方、受けた仕事を協力会社に再委託する側としては、規模の基準によっては、自社が義務を負う委託事業者になります。
従業員を使わない個人のドライバーに業務を委託する場合は、会社の規模にかかわらず、フリーランス法により、報酬の額や支払期日などの取引条件を書面やメールなどで明示する必要があります。荷主との間では、改正貨物自動車運送事業法により、2025年4月から、運送契約を結ぶときに運送の内容と対価、荷役などの附帯業務の内容と対価、有料道路代や燃料サーチャージなどの料金、支払方法などを記載した書面を相互に交付することになりました。国土交通省のQ&Aでは、この書面交付の対象に貨物軽自動車運送事業者も含まれ、電話だけでの運送依頼は違反になるとされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる取引 | 運送の再委託(役務提供委託)に加え、2026年1月から発荷主が運送を委託する取引(特定運送委託) |
| 規模の基準 | 委託する側が資本金3億円超で受ける側が3億円以下、委託する側が資本金1千万円超3億円以下で受ける側が1千万円以下、または委託する側が従業員300人超で受ける側が300人以下 |
| 委託する側の4つの義務 | 発注内容の明示(書面または電子メールなど)、取引記録の作成と2年間の保存、受領日から60日以内の支払期日の設定、遅延利息(年率14.6%)の支払い |
| 主な禁止事項 | 支払遅延(手形払等を含む)、減額、買いたたき、不当なやり直し、協議に応じない一方的な代金決定など11項目 |
08荷主と直接契約するとき、契約書で決めておくこと
直接契約の条件は、最初に決めたものが長く続きます。あとから変えるのは簡単ではないので、結ぶ前に次の項目を書面にそろえます。
交渉資料の作り方は運賃値上げ交渉の資料のひな形で紹介しています。契約を取ったあとも、品質の数字を月ごとに報告し続けることが、次の単価の話し合いと、次の荷主への提案の土台になります。売上全体の伸ばし方は軽貨物会社の売上を上げる方法もあわせてご覧ください。
- 単価と計算方法:日額・個建て・時間制のどれか、物量が想定と違ったときの扱い
- 附帯作業:積込み・取卸しなど運送以外の作業の内容と対価(国土交通省のQ&Aでは、荷役などは原則として運賃と別建てで対価を設定するとされています)
- 欠車時の対応:代走で守る範囲、間に合わないときの連絡と扱い
- 品質の約束と報告:どの数字を、どの頻度で報告するか
- 事故・破損:責任の分担と、保険でまかなう範囲
- 支払い:締め日と支払日、支払いの方法
- 見直しと終了:再協議の条件、解約の予告期間
Q&Aよくある質問
- 軽貨物の会社が、荷主と直接契約するには何が必要ですか?
- 今の現場で品質を数字で示せる実績、欠車時に代走で配送を守れる体制、安全管理・保険・請求の仕組み、入金までの支払いを立て替えられる資金が土台になります。そのうえで、立ち上げられる台数・エリア・期間を絞って提案し、条件を書面で契約します。
- 軽貨物の取引に、下請法(取適法)は適用されますか?
- 取引の内容と、双方の資本金・従業員数の区分で決まります。運送の再委託は以前から対象で、2026年1月からは発荷主が運送を委託する取引(特定運送委託)も対象になりました。運送の場合、たとえば委託する側が資本金1千万円超3億円以下で受ける側が1千万円以下なら対象です。迷う場合は公正取引委員会などに確認してください。
- 今の委託元を飛ばして、荷主に直接営業してもいいですか?
- まず今の契約に、委託元の取引先との直接取引を制限する条項がないかを確認してください。条項がなくても、頭越しの営業は今の取引と信頼を失うおそれがあります。今の現場を確実に回して実績を積み、関係を壊さない形で機会を待つか、新しい荷主を開拓するのが現実的です。
参考資料
制度に関する参照資料の確認日:2026年11月9日。個別の適用・最新情報は各窓口へご確認ください。
